みかんのたね

薬学や研究の話、くだらない話、愚痴などを書きます。

ショウジョウバエに対するロイヤルゼリーの効果

興味深い論文が最近報告されました。

PLOS ONE: The Phenotypic Effects of Royal Jelly on Wild-Type D. melanogaster Are Strain-Specific

 ショウジョウバエ(学名Drosophila melanogaster)に対するミツバチ由来ロイヤルゼリーの体サイズを増大させる効果は、実験に使うショウジョウバエの系統*1によって異なるという論文。

 

ロイヤルゼリーによるショウジョウバエのサイズ増大は、2011年のKamakura論文が有名*2ですね。

http://www.nature.com/nature/journal/v473/n7348/full/nature10093.html

 

今回の論文で著者らは、

It is interesting to note, however, that this previous study demonstrated phenotypic and physiological effects of RJ using only one wild-type D. melanogaster strain, Canton-S (Can-S). Multiple wild-type strains of D. melanogaster exist, and significant differences in responses to allelic mutations and environmental stimuli have been observed both between and even within certain wild-type strains.

と言っています。要は、Kamakura論文で使われたのはショウジョウバエの系統(Canton-S)なので、そのほかの系統でもロイヤルゼリーによるサイズ増大効果は再現されるのかを試したということです。今回著者らはOregon-Rという系統を使っているようですが、結果としては、Oregon-Rではロイヤルゼリーによる体サイズ増大効果は再現されないということです。

 

推測ですが、最初彼らはOregon-RでKamakura論文を再現しようとしたけども上手くいかなかったんじゃないでしょうかね。それでCanton-Sとの系統の違いに目をつけた、という歴史的経緯があるのかもしれません*3

 

私は、"Canton-S"と名付けられている系統の中も、維持されている研究室や研究機関によっては微妙に遺伝的背景が異なるのではないかと思いますけどね。それで、Canton-Sを使っておなじ実験をしてみてもロイヤルゼリーの効果が再現できないとか、あるいはちょっとした飼育条件の違いでロイヤルゼリーの効果が再現できないとか、そういうことは十分にあると思います。

 

実験の再現性がない時には発見が隠れているのだ、といういい例でした。この著者らはとても真面目に研究をしている印象です。「効果がなかった」「再現性がなかった」という方向性で書かれる論文も、真面目にやっている限りにおいて報告価値のあるものだと思います。

*1:血統みたいなもんです

*2:ロイヤルゼリー業界では

*3:論文に書かれているイントロダクションと、実際の研究室で起きた発見の経緯は必ずしも一致するものではないです。